A.石鹸による手洗いやアルコールによる手指消毒、マスクの着用、3密を避けるなど、一般的な注意事項をきちんと守りましょう。
なお、主治医に相談なく、現在の多発性硬化症(MS)治療薬を減量・中止するのはやめてください。
上気道感染症を含めたウイルス感染症をきっかけに、多発性硬化症(MS)の再発が増加したり、重症化したりする可能性が報告[1][2]されていることから、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について心配されている患者さん・ご家族も多いのではないかと思います。
COVID-19の感染リスクについて
現時点では、MSがあるというだけで、COVID-19の感染により生命に関わるリスクが高まるといった報告はありません(2022年3月21日時点)[3]。石鹸による手洗いや手指消毒用アルコールによる消毒、マスクの着用、「密閉空間」「密集場所」「密集場面」といった3密を避けるなど、一般的な注意事項をきちんと守って、COVID-19の感染予防に努めてください[4]。
より注意が必要なMS患者さんについて
下記4つに当てはまるMS患者さんがCOVID-19に感染した場合は、COVID-19の重症化、生命に関わるリスクが高まる可能性が指摘されていますので、該当する方は特に感染予防に努めてください(2022年3月21日時点)[3]。
①60歳以上の方
②心疾患や肺疾患をお持ちの方
③進行型MSの方
④EDSS(総合障害度スケール)6.0以上の、体が不自由な方(EDSS 6.0:100mの距離を歩くのに片手杖が必要な状態)
MS治療薬の服用について
一部のMS治療薬では、COVID-19を重篤化させる可能性が指摘されていますが、治療を中断したり延期したりすることで、MS自体が悪化してしまう危険性もありますので、慎重な判断が求められており、基本的には現在服用されているMS治療薬は“続ける”ことが推奨されています[3]。むしろ、患者さんの自己判断でお薬の量を減らしたり、使用を中止したりしないでください。不安な場合は、必ず主治医に相談してください。
COVID-19に関してはまだ不明な点も多く、世界各国で様々なデータが現在進行形で集積されています。今後の研究や新たな報告、状況の変化などによって、これまでの方針が見直される可能性もありますので、厚生労働省や日本神経学会、日本神経免疫学会のホームページなどで最新情報をこまめにチェックしていただけたらと思います。
【回答】九州大学大学院 医学研究院 神経内科学 教授 磯部 紀子 先生