Q.多発性硬化症(MS)の治療は、一生続けなければいけないのですか? A.多発性硬化症(MS)の再発を防いで進行を抑えるための治療(DMT)は、きちんと続けることが大切です。症状や疾患活動性などを定期的に確認しながら、将来のことを考えて、DMTを長期にわたって続けたほうが良いでしょう。多発性硬化症(MS)の再発を防いで進行を抑えるための治療(疾患修飾療法:DMT)をいつまで続けるべきか、いまだ明確な結論は得られていませんが、基本的には、DMTは長期にわたってきちんと続けることが大切だと私は考えています。ただ、MSの経過が長くなるにつれて再発が減少することも指摘されており[1]、加齢とともに病状が落ち着いてくる方もいらっしゃいます[2]。ですから私は、「症状や合併症の有無、疾患活動性などを定期的に確認しながら、DMTを続けていきましょう」と、患者さんに伝えています。「将来、障害のない状態でいること」を目標に、今できる治療をきちんと続ける 現在20代、30代の方にとっては、高齢に至るまでの年月は長いと感じられるでしょう。しかし、30年後、40年後、50年後などを想像してみてください。治療をきちんと続けていれば、「将来、障害のない状態」が維持できている可能性が期待できる一方で、治療を中断して病気が進行すると、身体機能や認知機能が低下して、日常生活に支障を来すことも考えられます。「将来、障害のない状態でいること」を目標にしながら、今できる治療をきちんと続けることが大切だと思います。 【回答】東北医科薬科大学 医学部 脳神経内科学 教授 中島 一郎 先生 日本神経学会 監修 『多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン2017』医学書院 p116 2017年 特定非営利活動法人 MSキャビン『多発性硬化症完全ブック 第5版』p74 2024年