多発性硬化症(MS)の検査
多発性硬化症(MS)の検査方法は?
多発性硬化症(MS)を診断する時は、まず医師が問診を行い、現在の症状や程度、これまでかかったことのある病気などについて詳しく聞きます。
その後、MSと似た病気とMSとを見分けるために、MRIで病巣の存在を視覚的に確認したり、疑われる病巣の場所や広がりなどを確認したりする神経学的検査をはじめ、様々な検査が行われます。MSの治療を始める上で、「他の病気でないことをはっきりさせること」が重要です。
また、MS発症後も、MSの進行レベルや治療効果を把握するために、脳・脊髄・視神経などの状態や、体の機能の障害度を定期的に評価することが重要です。
神経学的検査
どんな検査?
- 医師が直接、患者さんを診察します。
- 視力障害、運動障害、感覚障害、歩行障害などの有無と程度を確認します。
何がわかるの?
- 疑われる病巣の場所、広がりなどがわかります。
- 時期を変えて検査することで、病気の経過や治療効果の判定にも役立ちます。
MRI(核磁気共鳴画像)
どんな検査?
- 磁気と電波を用いて、脳や脊髄、視神経の断面写真を撮影します。
何がわかるの?
- 病巣の存在を視覚的に確認できます。
- 他の病気と鑑別するのにも重要です。
- 診断には欠かせない検査ですが、経過観察にも役立ちます。
EDSS(Expanded Disability Status Scale:
総合障害度スケール)
どんな検査?
- 体の機能の障害度を、医療従事者が0から10まで、0.5ポイントずつ20段階で評価します。
何がわかるの?
- EDSSのスコアが高いほど、体の機能の障害度が高くなります。[例えば、EDSSスコアが0の時は神経機能は正常、6以上になると歩行に補助(杖など)が必要、と評価されます]
- EDSSスコアを定期的に評価することで、MSの進行レベルを把握することが期待されます。
髄液検査
どんな検査?
- 腰に針を刺して髄液を採取します。
何がわかるの?
- MSのせいで起きている脳や脊髄の異常を確認できます。
- 他の病気と鑑別するのに非常に重要です。
誘発電位検査
どんな検査?
- 頭に小さな電極をつけ、ビデオ画面を見たり、手足に弱い電気刺激を与えたりして、脳波の変化を確認します。
何がわかるの?
- 脱髄の有無を確認するのに有用です。
(脊髄や視神経に脱髄があると、神経の伝導が遅れるため、脳波に異常がみられます)
MSの診断では、MSの特徴である中枢神経内の2つ以上の病巣(空間的多発性)と症状の再発・寛解(時間的多発性)があることに加えて、先に述べたように「他の病気ではない」ことを確かめることが基本になります。
「多発性硬化症(MS)の特徴」についてはこちら
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日本神経学会 監修 『多発性硬化症・視神経脊髄炎 診療ガイドライン2017』医学書院 p101-102, 160-165 2017年
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深澤 俊行 編 『やさしい多発性硬化症の自己管理 改訂版』医薬ジャーナル社 p30-31, 35-37, 45, 54, 126 2016年