料理や掃除、洗濯、ゴミ出しなどの「家事」は、注意力や記憶力、実行機能、情報処理能力など多様な「認知機能」(高次脳機能)を必要とします[1]。
多発性硬化症(MS)の「進行」とは、再発がなくても症状が1年以上にわたってじわじわと変化している状態を指しますが[2]、この「じわじわと変化する症状」の中に、認知機能の低下(高次脳機能障害)も含まれます。実は、MSが進行すると脳の容積が減少(脳萎縮)して、注意力や記憶力、実行機能が障害されることがありますので、MSの進行および脳萎縮によって家事を手際良く行うことが難しくなっている可能性も否定できません。
しかし、注意障害を主体とする認知機能障害(高次脳機能障害)は、MS患者さんの約半数で認められることが指摘されていることから[3]、認知機能障害(高次脳機能障害)は決してまれなMS症状ではなく、むしろMSでよくみられる症状の1つと考えています。
中には、MSの「発病前」の段階から認知機能障害(高次脳機能障害)が出現しているとの報告や、脳の萎縮はMSの進行度合いに関係なく起きているとの報告もあります[3]。