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多発性硬化症の情報サイト

『市民公開講座』記録集のご案内
多発性硬化症(MS)
視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)の
治療と生活(仕事)の両立支援

2023年8月20日(日)開催

仕事との向き合い方をいっしょに考えようパネルディスカッション

総合司会:河内泉先生
パネリスト:藤井ちひろ先生、吉倉延亮先生、中金竜次氏

Q.仕事を続けてもいいでしょうか?

河内先生:
日々の診療で、仕事を続けてもいいか、というご相談をよく受けますが、今回も「片目の視力を失い、NMOSDと診断されました。働き盛りで車を運転する仕事をしているのですが、仕事と生活の両立についてどこに相談したらいいでしょうか」「毎日働くと疲れが出てミスが目立つようになり、仕事の継続に自信がなくなってきました。どうしたらよいでしょうか」というご質問をいただきました。先生方のお考えをお聞かせください。

藤井先生:
患者さんお一人お一人で症状等が違うので、個別に回答するのが正しいと思うのですが、総じて先ほどの講演のときにお伝えした通り、MSは基本的に仕事を辞めないといけない疾患ではないと思ってます。ただ、疲労感や不安な思い、ストレスもある中で、なかなか今までどおりに仕事をすることが難しいという患者さんの声は私の外来でも非常によく伺います。

吉倉先生:
もちろん症状とのバランスやご本人の意思が優先ですが、基本的にはお仕事は続けることを勧めています。仕事を辞めて完全に社会から離れてしまうと孤立感を感じることにもつながってしまうと考えます。

中金氏:
NMOSD患者さんにとってミスが増える原因が認知機能低下や高次脳機能障害であれば、主治医と相談しながら神経心理学検査や脳ドックを受け、現状を把握するといいと思います。お仕事を継続するかどうか、メリット・デメリットも患者さんによって違いますので、状況も含めて検討いただくといいのではないでしょうか。

河内先生:
そうですね。就労における疲れと言ってもさまざまです。認知性疲労といって、認知機能障害に伴う注意力障害の疲労もあります。患者さんがどのような状態かを判断するのが私たち医療者の仕事ですので、まずは神経内科医に現状の困りごとをしっかりと伝えてください。状況がわかれば、そこから多職種連携で、働くための支援を始めることができます。

Q.病気のことを職場に伝えたほうがいいでしょうか?

河内先生:
「上司にも周囲にも病気のことを伝えることができません」というご相談も多くいただきました。

藤井先生:
ご自身でマネジメントできるうちはよいかもしれませんが、それが難しい段階になったら、打ち明けて相談することをお勧めします。会社に病気のことを知ってもらうことで、主治医も後方支援ができますし、活用できる制度も増えます。

吉倉先生:
すべてをオープンにする必要はないかもしれませんが、職場の中でしかるべき方には病気のことを伝えておいたほうが、サポートしてくださる環境が整いやすいと思います。

Q.病気のことを周囲の人に理解してもらい働きやすくするためには、どうしたらいいのでしょうか?

河内先生:
まずは周囲に伝えることですね。ただ、MSにしてもNMOSDにしても、まだ一般の方にはあまり知られていない疾患です[1]。過日、学会誌で公開されたデータでも、MS患者さんが苦痛を感じることとして、一般社会の人がMSという疾患を理解していないことであると報告されています[1]。今後、多くの方に病気について理解してもらうためのよい方法などはありますか。

中金氏:
医師の意見書に加え、自身の病気や障害の状況や職場に求めたい配慮(小休憩、通院、体調不良時の治療への理解など)といった働くうえで必要となる情報を整理して「状況説明書」として紙にまとめ、これをベースにしてコミュニケーションをとると、病気の知識がない人に対しても、自身の状況が伝わりやすくなるように思います。

Q.復職に向けて対策できることはありますか?

河内先生:
病気が原因でいったん休職したけれども、復職したいという方も多くおられます。「立ち仕事が大半の仕事で疲れが出てしまい、現在は休職しています。復職してまた働くことは可能でしょうか」というご質問をいただきました。

藤井先生:
復職して以前と同じ仕事ができるかについては、患者さんご自身がとても不安に思われると思いますが、無理だとあきらめてしまわず、主治医に相談してみてください。上司や産業医が主治医と連携を取り、時短勤務のように負荷を軽減した段階から復職したという方もいらっしゃいます。

吉倉先生:
いろいろな制度やサポートを活用して、ぜひ社会とつながってください。以前の仕事がどうしても難しいということがわかっていれば、配置について合理的な配慮を求めてみてもよいと思います。

中金氏:
長期間お休みされていて不安が強いという場合には、まず患者コミュニティなど身近で相談できる方にお話しされることで心理的な不安感が緩和されることもあるように思います。

仕事をしたい人も、仕事を希望しない人も

河内先生:
ありがとうございました。本日は就労支援ということでお話しさせていただきましたが、仕事をしたい人、仕事を希望しない人、それぞれの希望に添えるような支援をして、多様な方たちが皆でコミュニティを支え、一緒に前を向いていけばいいと感じています。ぜひ自分に合った適切な治療を選択し、人生で出会うさまざまな出来事に対応していただければと思っています。

『WEB市民公開講座』記録集のPDF版はこちら

  1. Andrew J, et al: Global Barriers to the Diagnosis of Multiple Sclerosis Data From the Multiple Sclerosis International Federation Atlas of MS, Third Edition. Neurology. 2023. 101(6): e624–e635. doi: 10.1212/WNL.0000000000207481