網膜静脈閉塞症について、よくある質問をQ&A形式でまとめました。 詳細は、各カテゴリーのページをご覧ください。
病気・治療について
Q. 網膜静脈閉塞症の発症を予測することはできますか?
網膜静脈閉塞症は、多くの場合は発症を予測することはできません。ただ、網膜静脈閉塞症は別名「眼に起こる脳梗塞」と呼ばれており、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病を持っている人に起こりやすいことが知られています。
Q. 網膜静脈閉塞症はどのような人に多いのですか?
網膜静脈閉塞症は一般的に高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病を持っている人に起こりやすく、中高年以降の患者さんが多いです。
若年の方でも発症することがあり、その場合は乳頭静脈炎であったり、白血病や多血症など血液の粘度が高まる病気が原因となることが多いです。
Q. 網膜静脈閉塞症の原因はわかっているのですか?
網膜静脈閉塞症は、網膜に通っている静脈に血栓ができて血流がせき止められることで発症します。
血栓ができる原因の多くは動脈硬化です。
高血圧や糖尿病、高脂血症が原因で網膜に通っている動脈の血管の壁が厚く硬くなると(動脈硬化)、接している静脈を圧迫し、静脈内に血栓ができて血流がせき止められてしまいます。
血流がせき止められて静脈内の圧が高まると、静脈から網膜へと水分や血液が漏れ出て、網膜がむくんだり(網膜浮腫)、眼底出血を起こしたりします。
網膜内に出血すると出血した部分が見えなくなり、網膜内の浮腫が黄斑(注)に及ぶと物がゆがんで見えたり見たい部分が見えにくくなったりします。
(注) 網膜で視力をつかさどる重要な細胞が集中している中心部
Q. 網膜静脈閉塞症には、どのような治療法がありますか?
網膜静脈閉塞症の根治療法(眼球の変形を治す方法)は現在のところありません。
眼底出血は基本的に治療をせず出血が吸収されるのを待ちますが、黄斑浮腫による視覚障害が起こった場合は、行う治療がいくつかあります。
VEGF阻害剤による治療は、VEGFの働きを抑える薬剤を眼内に注射することにより、黄斑浮腫を抑制する治療法です。
レーザー光凝固は、静脈が閉塞し血液循環が悪くなった網膜に新生血管(注)が発生するのを防ぐ目的で実施されることもあります。
治療法について詳しく知りたい方は、眼科医におたずねください。
(注) もともとある血管の代わりに新たに発生してくる血管で、もろく破れやすい
Q. 治療を受ければ元通りに見えるようになりますか?
網膜静脈閉塞症を発症して黄斑浮腫が起こると視覚障害が生じますが、その後の治療による回復は、閉塞した場所や期間によってさまざまです。
発症早期に治療を行えば、視力回復の度合いが大きくなる可能性があります。
しかし、黄斑浮腫が続いて網膜組織にダメージが加わると、視力の回復が難しくなります。
脳の動脈に血栓ができる脳梗塞と同様に、程度の差はあるものの後遺症、すなわち真ん中が暗く見える、ゆがむ、小さく見える、色が分からない、よく見えない、などの自覚症状が残ります。
Q. 治療が遅れるとどのような影響があるのですか?
治療が遅れて網膜浮腫が続くと、網膜組織が栄養不足におちいり、ダメージが加わるため、視力の回復がより難しくなります。
Q. 治療はどのくらいの期間と考えればいいのでしょうか?
治療法によって経過観察・治療実施のタイミングが異なりますので、主治医の先生とよく相談して指示に従ってください。
いずれの治療も、治療がいったん終了しても再発する可能性があるため、定期的な受診を続けてください。通常は治療開始1年~2年は経過観察が必要です。
Q. 年齢によって患者数は違うのでしょうか?
福岡県久山町(注)で行われた調査で年齢別の発症頻度をみると、50歳~59歳が1.6%、60歳~69歳が3.2%、70歳~79歳が2.3%、80歳以上では4.6%(久山町研究 1998年)で、年齢が高くなるにしたがって発症頻度が高いことが分かっています。
(注) 久山町は、住民が全国平均とほぼ同じ年齢・職業分布を持っている平均的な日本人集団であることから、日本人の健康状態の実態解明を目的とした様々な調査が行われている。
Q. 網膜静脈閉塞症の予防方法は?
網膜静脈閉塞症は、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病を持っている方に発症しやすいため、まずこれらの病気をコントロールすることが大切です。
網膜静脈閉塞症は、多くの場合で網膜の動脈硬化がきっかけで発症します。
網膜の動脈硬化による血管の変化は、自覚症状としてあらわれなくても眼底検査で確認できるため、生活習慣病のある方は定期的に眼科で検査を受けることをお勧めします。網膜の変化にいち早く気づき、早期に対処した方がより良い治療効果が望めます。
暮らし・将来について
Q. 網膜静脈閉塞症になったら、ウォーキングなどの運動は控えて安静にしておいた方がいいのでしょうか?
眼底出血を起こしているなど症状が激しい急性期の時期は、運動が網膜の血管への負担を高めてしまうため控えるべきでしょう。
ただし、網膜静脈閉塞症の主な発症要因である高血圧や糖尿病、高脂血症などをコントロールするためには運動も大切です。運動が可能かどうかは、主治医の先生とよく相談して指示に従ってください。
Q. もう片方の眼に発症する可能性について教えてください。また日常生活で気をつけることがあれば教えてください。
網膜静脈閉塞症は、多くの場合で高血圧や糖尿病、高脂血症など全身性の病気による動脈硬化がきっかけとなり発症するため、しばらくしてもう片方の眼に発症することもあります。
もう片方の眼で発症する兆しを早期に見つけ、対応するためにも、医師の指示に従って定期的な通院を続けてください。
Q. 現在ゆがんで見えるのですが、今後ほかの症状も合併することがあるのでしょうか?
ゆがんで見えるのは網膜静脈閉塞症による黄斑浮腫の代表的な症状の一つですが、ほかにも見たい部分がぼやけたり、不鮮明に見えたりする場合があります。
十分な治療が行われず黄斑浮腫が長く続き、視力をつかさどる重要な細胞がダメージを受けると、真ん中が暗く見える、小さく見える、色が分からない、よく見えない、などの症状があらわれてきます。
黄斑浮腫が生じたらできるだけ早く治療することが大切です。