治療法がある。進行が抑えられる。そのことを前向きにとらえましょう。
患者さんやそのご家族の中には、治療の成果に満足を感じられない方がいらっしゃいます。しかしこの病気にとって、治療法があるということは、実はとても画期的なことなのです。
聖隷浜松病院 尾花 明 先生
視力がもとに戻らなくても、これ以上の悪化を防ぐことに大きな意味があります。
患者さんの中には、「病気になる前の視力に戻りたい」といって、どんな治療の成果も前向きに受け止められない方もいます。 検査の結果、せっかく視力がよくなっても、「もっとよくなりたい」とおっしゃるので、いつまでも不満が消えることがありません。
加齢黄斑変性という病気は、かつて何も治療法がなかった時代には、どんどん悪化していく視力をどうすることもできなかったのです。 それが、新しい治療法によって、現状維持が可能になった。中には視力が改善する場合もある。これだけでも画期的なことなのです。
治療をしなかった場合、どのような経過をたどるのかを冷静に考えてみると(グラフ図)、放置した場合の危険性がわかると思います。 もとの眼の状態に戻ることはできなくても、これ以上悪くなるのを防ぐことができる、このことを前向きに受け止めていただけたらと思います。
ご家族の方も病気の本質を理解して、患者さん本人の気持ちに寄り添いましょう。
診察のときに付き添ってこられるご家族の中には、検査結果を聞いて患者さんと一緒になって一喜一憂してしまう方もおられます。 大切なご家族の病状を心配されるお気持ちはよくわかりますが、付き添いの方があまり心配な気持ちを表してしまうと、それが患者さんに伝わって、悪循環になりかねません。
また、治療を受けるとその効果をたずねてしまうのが常かもしれませんが、「どう?よくなったの?」と治療効果をあまりに期待した質問は、場合によってはご本人に不安を与えることにもつながりますので、悪くなっていかないことを治療のゴールにするぐらいの姿勢で接していただければと思います。
聖隷浜松病院 尾花 明 先生
1987年 大阪市立大学 医学部助手
1992年 大阪市立大学 医学部講師
1999年 大阪市立大学 医学部助教授
2001年 大阪市立大学大学院 医学研究科 視覚病態学助教授
2003年 浜松医科大学 光量子医学研究センター 光化学治療研究部門(現:メディカルフォトニクスセンター応用光医学研究部門)客員教授