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加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)の情報サイト

加齢黄斑変性患者さんとご家族のよくある質問

病気・治療について

↓Q. 治療を受ければ元通りに見えるようになりますか?

↓Q. 治療が遅れるとどのような影響があるのですか?

↓Q. もう片方の眼に発症する可能性について教えてください。また日常生活で気をつけることがあれば教えてください。

↓Q. 治療はどのくらいの期間と考えればいいのでしょうか?

↓Q. 加齢黄斑変性は遺伝するのでしょうか?

↓Q. 加齢黄斑変性の患者は、全国にどれくらいいるのでしょうか?年齢によって患者数は違うのでしょうか。

↓Q. 新生血管は治療後どうなるのでしょうか。新生血管はまた生えてくるのでしょうか?

↓Q. 現在ゆがんで見えるのですが、今後ほかの症状も合併することがあるのでしょうか?

↓Q. 長年、加齢黄斑変性を放置してしまった友人がいますが、治療に手遅れなどはあるのでしょうか?

↓Q. 加齢黄斑変性の症状経過に、季節的な要因などはあるのでしょうか?

くらしについて

↓Q. 加齢黄斑変性になったら、ウォーキングなどの運動は控えて安静にしておいた方がいいのでしょうか?

↓Q. 高血圧などの生活習慣病は病気の進行と関係あるのでしょうか?

心の不安について

↓Q. 加齢黄斑変性は視覚障害者手帳交付の原因疾患の上位と聞きますが、光も見えなくなってしまうのでしょうか?

 

病気・治療について

Q. 治療を受ければ元通りに見えるようになりますか?

発症早期の加齢黄斑変性であれば、病変部が治療によってきれいになり、見え方が元に戻ることもあります。

しかし、病変の状態が長く続き網膜組織にダメージが加わると、現在のところ、網膜の状態を完全に戻す治療法はありません。

その結果、程度の差はあれ、真ん中が暗く見える、ゆがむ、小さく見える、色が分からない、よく見えないなどの自覚症状が残ります。

治療が遅れると、視力の中心的な役割を担う黄斑の機能低下がさらに進行してしまうため、治療に時間がかかる上、治療による視力回復も不十分になります。

網膜のすぐ外側にある脈絡膜(みゃくらくまく。網膜に栄養を送っている)から伸びてきたよくない新生血管は、発生直後には活発に活動しませんが、網膜色素上皮の上にまで侵入してくると、血液が激しく漏れ出してしまうため、黄斑の機能も著しく低下してしまうのです。

黄斑の機能低下、とくに視力低下を最小限にとどめるには、一にも二にも、早期発見、早期治療が大切です。

イメージ:脈絡膜、新生血管、網膜色素上皮、網膜の位置を示したイラスト

加齢黄斑変性は、はじめは片眼に発症しますが、しばらくしてもう片方の眼に発症することもあります。

特に、黄斑にドルーゼン(老化に伴ってできる垢のようなもの)や色素(しみのようなもの)が見られる場合は要注意です。

もう片方の眼の発症を予防するためにも、医師の指示に従い、定期的な通院を必ず続けてください。

また、たばこが加齢黄斑変性の危険因子であることが、世界中の多くの調査結果でわかっています。たばこは今すぐにでもやめましょう。
ただし、たばこをやめても効果が出るには、約5年~10年(研究者によって差があります)はかかると報告されています。

イメージ:男性が喫煙しているのを禁止しているイラスト

治療法によって経過観察・治療実施のタイミングが異なりますので、主治医の先生とよくご相談をされ、指示に従ってください。

いずれの治療も、治療がいったん終了しても再発の可能性もあるため、定期的な受診を続けてください。通常は治療開始1~2年は経過観察が必要です。

イメージ:眼鏡をかけた男性医師と説明を聞いている男性のイラスト

Q. 加齢黄斑変性は遺伝するのでしょうか?

加齢黄斑変性の発症とその後の病態の悪化に、遺伝的な要因が大きな影響を与えていることがわかってきました。

今後、さらに研究が進めば、遺伝子のタイプによって、病状が悪化する可能性を推測した上で、よりきめ細かな治療が行えるようになる可能性があります。

Q. 加齢黄斑変性の患者は、全国にどれくらいいるのでしょうか?年齢によって患者数は違うのでしょうか。

2007年の研究結果では加齢黄斑変性の発生頻度は1.3%、50歳以上の総人口に換算すると、70万人にものぼります。

1998年当時の研究結果と比べると、その数字は9年間で急激に増えています(久山町研究2007)。

年齢別の発生頻度を、片方の眼に進行が早く視力障害を起こしやすいタイプ(滲出型)でみると、 50~59歳が0.5%、60~69歳が0.9%、70~79歳は0.5%、80歳以上では1.1%(久山町研究1998年)で、 年齢が高くなるにしたがって発生頻度が高いことがわかります。

高齢人口の増加とともに加齢黄斑変性の患者はますます増えていくことが予測されています。

治療によって、新生血管からの漏出が抑えられると、厚くなっていた網膜が薄くなって正常な状態に近づいていきます。

治療の目的は新生血管の活動性を抑えることにありますが、新生血管自体が完全に消える人は少数です。

抑制された新生血管も、再燃、再発があり、新たに出血や漏出が起こる場合があります。

水道に例えると、新生血管からの漏出は水道のパッキンが古くなっているため、そこから水が漏れてくるようなものです。

イメージ:水道管から水漏れしているイラスト

Q. 現在ゆがんで見えるのですが、今後ほかの症状も合併することがあるのでしょうか?

ゆがんで見えるのは加齢黄斑変性の代表的な症状の一つですが、ほかにも見たい部分がぼやけたり、不鮮明に見えたりする場合があります。

また、色の判別が難しくなったりすることもあります。そのほか、日中はよく見えたものが、夕方や夜になると、とたんに見えにくくなることもあります。

また、黄斑部にできたよくない血管(新生血管)からの出血や滲出を放置すると、網膜の視細胞にダメージが残ります。

そうした場合には、中心暗点と呼ばれ、視野の真ん中がグレーがかって見えにくくなる症状が出てきます。また、視力が低下し、見たいものが見えなくなります。

進行を抑え、これ以上悪化させないために、定期的なチェックを忘れず、早期発見、早期治療を心がけましょう。

病状が進行して網膜の病巣が瘢痕化(はんこんか)といって、正常な網膜細胞が損傷を受けてしまった場合には、現在の治療法ではその部分の機能を改善させることは期待できません。

しかし、その瘢痕化の範囲が限定的で依然として病状が進行している場合には、それ以上悪化させないための治療を考えていくことが必要な場合があります。

またもう片方の眼をできるだけ健康な状態に保つことも大切です。

長年放置してしまうことにより、今さら何をやっても仕方ないと思われるかもしれませんが、現状の見え方をできる限り維持して、日常生活での不便を最小限にするためにできることがあるかもしれません。

また、残っている機能を活用する「ロービジョンケア」も行われています。一度、眼科医に相談されることをお勧めします。

イメージ:網膜と新生血管を長年放置すると瘢痕化することの説明イラスト

季節的な症状の推移について明らかなデータはありませんが、紫外線は老化を促進し、加齢性の眼の病気の危険性を高める可能性があります。

また、可視光のうちで青色光が網膜や視細胞の色素上皮に障害を起こすことも知られています。

青色光や紫外線が増える春から夏の時期にかけては屋外での活動機会が多くなります。

日焼けを気にして、日焼け止めクリームを肌に塗ったり、帽子をかぶる人は多いのですが、眼もサングラスでしっかり守りましょう。

イメージ:日除け防止とサングラスのイラスト

くらしについて

近年のアメリカの研究で、運動をよくする人は、そうでない人に比べて加齢黄斑変性の危険性が低下する可能性が示唆されました。 一般的に運動による炎症の軽減効果が報告されていますし、適度な運動は生活習慣病の予防にもつながるなど、全身の健康を保つ上で重要です。

ただし、治療を行う前後数日は、医師から指示があれば普段の運動を控えましょう。

イメージ:女性がランニングしているイラスト

Q. 高血圧などの生活習慣病は病気の進行と関係あるのでしょうか?

海外の疫学調査で高脂血症の人では加齢黄斑変性にかかりやすいという報告があります。高血圧の人では出血を起こしやすいという報告もあります。

加齢黄斑変性は、黄斑の新生血管によって視力が衰えていく病気ですから、高脂血症、高血圧、糖尿病など血管に影響を与える生活習慣病との関係は十分に考えられます。

すでに高血圧などの生活習慣病を医師から指摘されている人は、医師の指示にしたがってコントロールしていきましょう。

心の不安について

Q. 加齢黄斑変性は視覚障害者手帳交付の原因疾患の上位と聞きますが、光も見えなくなってしまうのでしょうか?

加齢黄斑変性は、視野の中央が見えづらい、ゆがむなどの症状が現れ、中心部の視力は低下しますが、通常は中央以外の視野は保たれます。

ただ、視野の中心部が見えないという状態は、文字を読んだり、人の顔を認識したりするときに大変に不便なもので、日常生活に大きな支障をきたします。

完全に光まで失ってしまうことは、ごくまれです。

日本大学 名誉教授湯澤 美都子 先生

監修:日本大学 名誉教授湯澤 美都子 先生

1975年3月
日本大学医学部卒業

1975年4月
日本大学医学部眼科学教室入局

1980年4月
日本大学海外派遣研究員として Nijimegen大学(オランダ)留学

1981年4月
帰国

1982年4月
日本大学医学部眼科学 講師

1995年10月
日本大学医学部眼科学 助教授

2002年11月
駿河台日本大学病院 副院長

2003年6月
日本大学医学部眼科学 教授

2011年11月
駿河台日本大学病院 院長