眼の構造と働きについて
眼に入った光の情報は「角膜」「瞳孔」「水晶体」「硝子体」を通って「網膜」の上に像を結びます。その情報は「視神経」を通じて「脳」に伝えられ、最終的に「映像」として認識されます。目の働きはしばしばカメラにたとえられ、水晶体はレンズ、網膜はフィルムの役割をしているといわれています。
ものを見るうえで、重要な役割を担う黄斑(おうはん)
フィルムの役割をしている網膜の中でも、視力をつかさどる重要な細胞が集中しているのは黄斑(おうはん)と呼ばれる中心部分です。黄斑は、ものを見るために一番重要な部分で、ものの形、大きさ、色、奥行などの光の情報の大半を識別しています。
この部分に異常が発生すると、視力の低下をきたします。また、黄斑の中心部には中心窩という最も重要な部分があり、この部分に異常をきたすと、視力の低下がさらに深刻になります。
写真提供:日本大学 名誉教授 湯澤 美都子先生
黄斑の範囲は、厚生労働省 網膜脈絡膜・視神経萎縮症研究班「加齢黄斑変性の分類と診断基準」に準じました。
病的近視の眼底で見られる主な異常
強度近視で眼軸が延長した眼では、網膜や脈絡膜が後方に引っ張られて負荷が増し、眼底に次のようなさまざまな異常が生じます。
後部ぶどう腫
眼軸の延長により、眼球後部の一部が伸展して拡張する病態です。網膜や視神経が後方に引っ張られ、眼底にさまざまな異常をきたします。
脈絡膜からの新生血管
脈絡膜に張り巡らされている血管は、網膜へ栄養を供給する役目をもちますが、強度近視により脈絡膜が引き伸ばされ網膜と脈絡膜の境界が障害されると、新たにもろい血管が網膜の下に生えてきます。これが新生血管で、病的近視の約10%に生じます[1]。
写真提供:東京医科歯科大学 大野 京子先生
網脈絡膜萎縮
眼軸の伸展により、脈絡膜が菲薄化し、脈絡膜、網膜が障害されて萎縮する病態です。
近視性牽引性黄斑症
強度近視により眼球の壁が引き伸ばされた状態で黄斑の網膜にすきまができたりはがれたりして、視力が低下します(黄斑分離や黄斑剥離)。進行して中心窩に孔(あな)があいて、網膜剥離(もうまくはくり)が悪化することもあります。
視神経症
眼球の伸展や眼圧の変化などで視神経やその神経線維が障害され、視野障害の原因となります。
こういった異常が生じた強度近視を病的近視といいますが、異常が黄斑に影響を及ぼすと、急に視力が低下したり、ものが歪んで見えたり、ぼやけて見えるようになります。
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Morgan I. G., et al.: Lancet, 379(9827), 1739(2012)